■ バチェラーでの事前印象：港区女子特有の“選ばれる側の余裕”

プロフィールの段階から強さがにじみ出ていた。

・大手外資の戦略チーム
・週末はレセプションや食事会に呼ばれている
・趣味はラグジュアリーホテル巡り
・写真の背景がすべて“生活感ゼロ”
・文章が妙に端的で、男を値踏みしている匂いがする

それでいて、こちらへの質問は最低限。
“必要な情報だけ把握して、あとは会って判断します”というスタンスだった。

この手の女性は、男のちょっとした虚勢や背伸びをすぐ見抜く。
同時に、こちらが無理していないかも敏感に察する。

そして何より、
「自分に釣り合わないなら次行きますけど？」
という空気を隠そうともしない。

良くも悪くも、港区の夜が育てたタイプだった。

■ 当日：“常に誰かに観察されているような”緊張感

待ち合わせ場所に現れた彼女は、オーラが強すぎた。

白いロングコートに、黒のタイトなワンピース。
ハイブランド特有の形のよいバッグを軽く持ち、目元のメイクは完璧で、髪は一切崩れていない。

そして開口一番、ほぼ挨拶もなく、

「今日すごく寒いですよね。室内あたたかい場所でお願いします」

トーンが完全に“選ぶ側”のものだった。
だが嫌味というより、彼女の世界ではそれが普通なのだと思わせる説得力があった。

■ 食事：大人の高層階レストランで、彼女の“フィルター”が作動する

店は、静かで落ち着いた高層階。
こういう女性には、安定した“大人の箱”が最適解だ。

席に着くと、彼女はメニューに軽く目を通しただけで、

「お任せしますね。選択肢は少ない方がストレスないので」

と言う。その言葉すら、なぜか威圧感がある。
だが不思議と嫌な感じがしない。
“彼女の世界線には、甘えや緩みがほとんど存在しない”だけなのだ。

会話をすると、さらに輪郭が鮮明になる。

「仕事は競争ですから、成果出せないなら退場。恋愛も似たようなものですよね。」
「港区って合う人と合わない人がはっきりするんです。だから場所で人が分かります。」
「付き合うなら、“仕事の足を引っ張らない人”じゃないと無理。」

言葉一つひとつに、妙な重みがある。
しかしその奥には、
「本当は誰かに理解されたいけれど、簡単に弱みは見せない」
タイプ特有の孤独もちらついていた。

ワインを飲む姿も綺麗で、グラスを持つ指先まで計算され尽くしたようだった。

途中で彼女が言う。

「仕事も恋愛も、妥協すると後から後悔するじゃないですか。
だから私は“選ぶ側”でい続けたいんです。」

ここまで自覚的な女性は、むしろ気持ちがいいと思った。

■ 二軒目：冬の静かなラウンジで、ようやく見えた“隙”

外は冷え込んでいたが、歩く彼女のヒールの音はきれいに揃っていた。

二軒目は落ち着いたラウンジバー。
席に座るなり、彼女はコートを脱ぎ、ふぅ…と短く息を吐く。

そこで初めて、港区女子の鎧が少しだけ外れたのが分かった。

「…正直に言うと、こういうちゃんとした食事って久しぶりでした。
最近は仕事ばっかりで、“余裕ある男性”と話すのすら久々で。」

プライドの奥に、
頑張り続けて疲れている女性特有の脆さ
が一瞬だけ見える。

グラスを指でなぞりながら、彼女は続ける。

「私、強いと思われるけど…ほんとは、誰かに追いつけなくなるのが怖いんです。」

その瞬間、港区女子の“強さの源”が少し理解できた気がした。
彼女たちは華やかさで生きているのではなく、
“置いていかれないために必死に走っている”
だけなのだ。

そしてその走る姿勢を、誰にも悟られないように磨き続けている。

冬の静けさの中、その告白はやけに胸に残った。

■ 帰り際：プライドは折れず、でも一歩だけ距離が近い

タクシーを止めると、彼女はキリッと顔を戻した。
プライドはまだ健在で、簡単には崩れない。

だがドアに手を掛けた瞬間だけ、ほんの少し表情が柔らかくなった。

「今日は…変に気を遣わなくて良かったです。
あなたみたいに落ち着いてる人、久しぶりかも。」

そして小さく付け加える。

「また会っても、いいですよ。」

“許可制”なのが港区女子らしくて、思わず笑いそうになった。